ビジネスアイデアを形にするステップや検証方法は商品やサービス、市場規模によっても異なります。ここでは1つの例としてご紹介します。

STEP1 ビジネスアイデアを見つける

①やりたいこと

自分がやりたいことや好きなこと、こんな風になりたいことなどを

書き出してみましょう。

②できること
自分の経験や資格、スキルやほかの人より自分のほうが得意なこと、評価されることなどを書き出してみましょう。

①②で自分が何をしたくて何ができるかが整理できます。

そこに世の中の課題やニーズという③求められることを重ねた部分が起業のタネの可能性があります。やりたいことやできることが多くある場合は、優先順位をつけておくと良いでしょう。

STEP2 事業環境分析

 ビジネスアイデアが見えてきたら、事業環境分析をして検証してみましょう。

 事業環境分析は自分のビジネスをどのような環境で行うのか?について分析することです。例えば、あなたはサッカーチームを率いる監督だとしましょう。自分のチームはどんな強み弱みを持つ選手がいるのか、チーム全体の強み弱みは何か、対戦相手の強み弱みはなんなのか?暑いところで試合をするのか、寒いところなのか、芝の状態はどんなところか、何時に試合をするのか、その時の太陽の位置や気温、風はどうなっているのか、、、それらは自分のチームに有利なのか不利なのか、、、などなど、それら一つ一つを分析し、どう勝ちへ導くのかの戦略を立てることでしょう。

事業活動も同じで、客観的に自分の商品はどういうものなのか、それをどのような環境で勝負するのかを書き出して整理することが重要です。そこで便利なのがフレームワークです。自分だけでは見落としそうな観点もフレームに当てはめることで、網羅的に検討できますので、いくつか覚えておくと良いでしょう。

【社会の変化が激しい時に使える】PEST分析(ぺすとぶんせき)

 PEST分析とは大きな世の中(マクロ環境)の分析を行います。自分ではコントロールができない外的事業環境が自分のビジネスの収益に及ぼす影響を把握できます。特に社会の変化が激しい時などは有効です。分析を行う際は、事実と自分の解釈や推測は分けて行うことに注意しましょう。

例:移動販売を検討している場合のPEST分析

Politics
政治的要因
・規制や法改正  ・政治動向
・税制の変更  など
(例)
・食品衛生法の改正  ・営業許可の制度変更
Economy
経済的要因
・経済成長 ・株価変動
・景気指数の変化 など
(例)
・コロナによる経済低迷  ・輸入品高騰
Society
社会的要因
・社会的事件による影響
・流行の変化 ・嗜好の変化 など
(例)
・外食制限、自粛ムード  ・おうち時間増
・デリバリーサービス業者増
Technology
技術的要因
・技術革新   ・利用促進
・販売促進技術の変化 など
(例)
・チルド、レトルト技術向上  
・SNSサービス増

【状況を分析し、自社の戦略をたてる】SWOT分析(すぅおっとぶんせき)

SWOT分析は自分のビジネスを取り巻く環境(外部環境)と自分のビジネスの現状(内部環境)を分析し、ベストなビジネス機会を発見するフレームワークです。
まず、現状分析をしてみましょう。「内部」とは外部環境要因に左右されず、自分で調整可能なものを指します。例えば、製品やサービス、人材、技術・ノウハウなどです。「外部」は政治経済状況や景気、業界や顧客のニーズの変化など自分では変えることができない要因のことです。

次に現状分析で出てきた「強み」「弱み」「機会」「脅威」を掛け合わせて分析し、戦略を立てます。
起業時は「機会に強みを投入する戦略」に集中すべきです。なぜなら機会に強みを活かすことが最も成功の可能性が高いためです。また、脅威に強みを活かすことができれば、それは差別化戦略につながります。弱みを補強し機会をつかむための戦略や脅威を避けるための戦略を考えておくとよいでしょう。

【自社の強みを明確にする】3C分析(さんしーぶんせき)

「顧客Customer」」「競合Competitor」「自社Company」の3つの要素を分析することで、具体的に「誰に、何を、どのように」提供し対価を得るのかを分析します。先に「顧客」「競合」から分析し、最後に「自社」を分析をします。自社から分析をすると分析が甘くなりやすいです。

競合他社と自社の「売り」

 起業して、売上高や利益をきちんと上げられるような体制を確立するためには、競合他社にはまねできない競争優位性を持つことが必要です。これまでのフレームワークで自社だけでなく競合についても情報収集ができていると思います。競合他社にはない独自の「売り」で「自社だけがお客様に約束できる利益」をUSP(Unique Selling Proposition)といいますが、このUSPを確立することでお客様に独自の強力な提案をすることができ、それが「選ばれる理由」につながっていきます。
 USPを考えるときは、
  ① 顧客を特定する
  ② ①の顧客がもつ課題やニーズは何か
  ③ ②を満たすために他社より自社が有利な点は何か

をピックアップしてみましょう。また、競合は同業者とは限りません。ターゲットをよく分析し、いろいろな視点から捉えてみましょう。

フレームワークがたくさんあって何を使ったらよいかわからない…

SWOT分析と3C分析をご紹介しましたが、内部環境と外部環境を分析する点では共通していますが、違いもあります。3C分析の視点は「顧客」で自社の強みを明確にすることです。SWOT分析の視点は「自社」で自社の強み弱みと外部環境との分析によって、変化やチャンスに柔軟に対応できるようにすることです。あまり細かいことは考えずにフレームに当てはめてまずはやってみましょう。

STEP3 ターゲット・市場を決める

 事業戦略などを考えていると、ついつい受け入れられる幅を広げてしまいがちです。その結果、ターゲットが絞り込めず誰のニーズも満足させられない商品になってしまう可能性がありますので、注意しましょう。ここで紹介する「STP分析」とは、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)、の頭文字を取った分析手法で、どの顧客を狙い、どのような立ち位置でアプローチしていくかを考えるときに役立ちます

■【顧客を絞り、戦略を練る】STP分析(えすてぃーぴーぶんせき)
Segmentation
セグメンテーション
市場の細分化。顧客を同じニーズのグループに分類する例)国、都道府県、年齢、性別、ライフスタイル など
Targeting
ターゲティング
細分化したグループの中から、どの顧客を狙うのかを決める例)30~40代の子育て世代の女性
Positioning
ポジショニング
ターゲットに設定した市場における自社の立ち位置を決める例)値段は高め、充実した長めの施術

具体的な顧客像を描いてみましょう(ペルソナを設定する)

 ターゲットを決めたら「ペルソナ」を設定してみましょう。「ペルソナ」とは仮想の顧客で商品やサービスの典型的なお客様像のことを言います。ターゲットよりさらにリアルなお客様像となります。
ペルソナを設定するメリットは
 ・お客様視点の精度が上がる
 ・ブレが出ない
 ・無駄が出ない。効率的
  などがあります。

(例)

ターゲット30~40代女性
ペルソナ・田中 恵子(42歳 女性)  ・新潟県長岡市在住
・フルタイム(日勤)で働いている
・家族構成:夫、長男(11歳)・長女(6歳)・義父の5人家族
・土日は休みだが、ほぼ子供の習い事の送迎をしている
・一人になる時間が少なく、仕事と家事・育児で慢性的に疲れている
・好きな食べ物はエスニック料理、ハーブティー
・趣味はトレッキング。朝日山や八石山など。最近は忙しくて行けていない
・Facebookに風景写真や料理写真をよく載せている

自社の立ち位置はどこ?(ポジショニングマップを作る)

 自社の市場の中での立ち位置を考えるときには「ポジショニングマップ」を作ってみましょう。
例えば、横軸に「価格」、横軸に「サービスの質」を入れ、競合他社の特徴を考えて図に落としてみます。そのマップを見ながら、自分が考えたサービスと価格が他社と重なる場所にあるかどうかを見てみます。重なれば競争が激しい、重ならなければ競争しなくても生きていけるかもしれない、と判断できます。もちろん、競争もなく、ニーズもないのでは問題があります。マップの切り口はいくつかありますので、例を参考に自分で作ってみましょう。

(例)アロマテラピーサロン

▼マップ内の縦軸・横軸例
・年齢層・職業・所得・希望・嗜好・困りごと・価格・デザイン性・実用性・耐久性・スピード・商品レベル・機能性・機能数・空間・味・サービスの提供方法 など

STEP4 事業コンセプトを決める

 事業コンセプトは「あなたの事業を端的に言うとどういう事業ですか?」ということです。難しい言葉やかっこいい言葉にする必要はありませんが、事業のターゲット(誰に)、提供価値(何をどのように)が入っているとわかりやすいです。他にも、商品やサービスの特徴やビジネスモデルを入れ込むなどもありますが、一言で言い表すものにそれほどの多くの要素を入れた表現を作ることはなかなか難しいものです。まずは自分で考えてみて、事業拡大や法人成り、ホームページやロゴマークなどを作るときなどに、プロのコピーライターやデザイン会社に依頼するのもよいと思います。なお、大手企業などは市場や事業の幅も広い場合、「誰に」が入っていない場合がありますので、事例は参考程度にご覧ください。 

例)
ストアカ「教えたいと学びたいをつなぐまなびのマーケット」 
Uber Eats「美味しい料理が玄関先に」

STEP5 マーケティング戦略(売る側の視点、買う側の視点)

 マーケティングで有名な言葉に「ドリルを買う人が欲しいのはドリルではなく穴である」というものがあります。顧客は何かしらの理由で穴をあけたいと思い、ドリルを買いに来ますが、穴が開くのであればドリルでなくてもかまわないのです。また、穴をあけたい理由がそこにくぎを刺してカレンダーをかけたいとすると、穴をあけずに壁にカレンダーがかけられるものがあれば、そちらでもよく、ドリルは必要なくなるのです。これは商品を売る立場からはドリルを売りたいわけですが、顧客にしてみるとドリルは1つの選択肢であって「カレンダーを壁にかける」という目的達成を購入しに来たわけです。このことからも、自社の事業戦略を考える際、商品本位ではなく、顧客のニーズから考えることがとても重要であるといえるでしょう。また、競合をイメージするときも、同じカテゴリ―(例えば、他社のドリル)ばかりを見るのではなく、顧客ニーズを満たす異種カテゴリーも見落とさないようにしましょう

■ニーズ調査の方法
いくつかあるニーズ調査の方法をご紹介します。

 ・友人など周りの人に聞く
 ・インターネットで検索する
 ・SNSなどのコメントを分析する
 ・インタビュー調査
 ・アンケート調査
 ・行動観察
 ・サンプル調査/トライアル実施

「友人などに聞く」は一番身近なヒアリング方法です。意見もらえるだけでなく応援(またはその逆も)ももらえ、起業の励みになるかもしれません。しかし、身近な人だけに都合の良い反応しか得られない場合もあるので、客観的なデータが得られるニーズ調査を組み合わせましょう。商品やサービスの内容にもよりますが、「インターネット検索」や「SNSのコメント」を分析することで、とても多くの情報が手に入りますので調査の初期の段階でやってみるとよいでしょう。ただ、情報が多すぎたり、情報の真偽が不明の場合もありますので、振り回されないように注意が必要です。 ユーザーの「行動観察」では、ライフスタイルからヒントを得ることもあります。「アンケート調査」は用紙を配布し行う場合もありますが、GoogleformやSurveyMonkeyなどデジタルツールを使うと、広く集められ、集計も楽になりますので、簡単なものは作成できるようになっていると起業後に新商品などを考えたりするときなどにも役に立ちます。「サンプル調査/トライアル実施」は商品やサービスが固まりきる前に商品に意見をもらうことを前提に正規料金より少し割安にユーザーに使ってもらいます。ユーザーと一緒に商品を作り上げていく感覚や、ユーザーも応援の気持ちで意見を言えるので、ニーズ調査以外の効果も見込めるかもしれません。自身の商品・サービスにあったニーズ調査をしてみましょう。


■参考

Googleform  https://www.google.com/intl/ja/forms/about/
SurveyMonkey  https://jp.surveymonkey.com/

ニーズがなければニーズを作り出す、という考え方も

 新しいアイデアや商品・サービスの場合、まだニーズが顕在化していない、という場合もあります。
しかし、自分が何かしらの理由で「必要だ」と思ったということは、ニーズが全くないわけではなく、市場がそのニーズに気づいていないだけかもしれません。だからと言ってあきらめることはありませんが、ニーズが顕在化している商品と同じマーケティングをしていても芽が出ない可能性があります。新規性の高い商品やサービスで起業する場合はニーズを作り出す戦略を合わせて考えていくことで、その分野の先駆者となることもできるでしょう。